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宵闇
第21章 月影
「私より葉月くんがつけてよ」
「え?」
「葉月くんこそもてるから心配!」
「いや、もてないから」
その即答。
この前、小野さんに告白されたって言ってたくせに。
「……前から思ってたんだけど、琴音、たぶん勘違いしてると思うんだよね」
「勘違い?」
「うん。そもそもどうして琴音は僕がもてるなんて思うの?」
「だって優しいし……!」
かっこいいし、頼りになるし──と、他にもいろいろ挙げていくと、葉月くんが溜め息でそれを遮った。
「ねえ、琴音」
「ん?」
「僕……優しくなんかないけど」
「え? 優しいよ!」
葉月くんが優しくないなら、いったいどんな人のことを優しい人って言うの?
あのねー、と葉月くんが苦笑いしながら溜め息をついた。
「僕が優しくしたいと思ってるのは琴音だけだから。
他の人にはそんなじゃないからね?」
「え?」
そうなの?
私にだけ優しいの?
「だから琴音が思ってるほどもてないから」
「……そう、なんだ……」
葉月くんが続けた言葉はほとんど頭に入らないまま、私は返事を返していた。
……そっか。
私だけに、なんだ────。
そう──私にだけ優しくしてくれているという、葉月くんの言葉に対する返事を。