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宵闇
第21章 月影
「……何笑ってるの?」
「え?」
すぐ耳元で聞こえた声にはっと我に返ると、今度は反対に葉月くんが私の顔を下から覗き込んでいた。
「わ!」
反射的に声をあげると
「にやにやしちゃって……琴音やらしい」
「え!? 違う──違うから!」
慌てて両手を振って否定しつつも、そんなふうに言ってくる葉月くんの表情だって、そうで。
もう、と思わず照れ隠しのために唇を尖らせた私を本当に楽しそうに見てくる。
──再度、左手が握られた。
「……とにかく、指輪は買わせてよ」
にこっと笑いながら、ね? と真っ直ぐに見つめられた私はもう頷くしかなかった。
「よかった」
葉月くんがほっとしたように呟く。
と、同時に──握っている手の力を少し抜き、つつ……とその長く綺麗な指で挟みながらゆっくりと私の薬指をなぞってくる。
「……っ」
びくん、と反射的に手が動いた。
指を見ていた葉月くんが、私に視線だけを流してきながら
「好きだよ……」
と、私の手をそのまま自分の唇へと持っていった。
そのまま、ちゅっと口づけられ、ああ……と溜め息のような声が私の口から思わず漏れる。
「……琴音は?」
問いかけられた私は、口づけられたその指を見ながらこくんと頷く。
「ちゃんと言って?」
でも、そんなふうに返されて。
ん……と、喉をこくりと鳴らしながら
「……すき」
そう、呟いた。