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宵闇
第21章 月影


──途端にその口が葉月くんの唇で塞がれる。


ゆっくりと。
……ゆっくりと。

まるで私の唇を満遍なく味わうかのように舌先でかたちを辿ってくる。
ちゅっ、と音をたてて吸われる。

繋がれたままの左手が、ぎゅっと握られた。


「ん……は……っあ……」


私の身体の深いところ。
そこにじんわりと火をつけていくかのような、ゆったりとした……でも、とても濃厚な口づけ。


空いていた右手で、無意識のうちに葉月くんの服の裾を掴んでいた。


──と、そのとき。


「あ」


突然、葉月くんが唇を離した。


「……え?」


どうしたのかと目を開けて、彼を見上げる。


「……こういうこと、琴音の部屋でじゃないとだめなんだっけ」

「え……」


うっとりするようなその感覚がこんなにも残っているのに。


「……だよね?」


葉月くんはそう言って私に微笑みかけ、それから、目をふっと逸らす。
そのままテーブルの上のカップを手にし、コーヒーを口にする。


「……っ……」


──やっぱり。
葉月くんって本当に────。


「意地悪……!」


掴んだままの袖を、さらに強く握った。


「……ねえ、行こ……?」

「ん?」


こんなふうにすぐに葉月くんを欲しがってしまう私を、いつも彼は余裕ありげな態度で、楽しそうに──嬉しそうに笑って見つめてきて。


「だから……!
……部屋に、行こ?」

「琴音の部屋?」


こくん、と頷く。


「……欲しくなった?」


直接的な言葉に顔が熱くなる。
それでもまた袖を引き、素直に頷いた。


葉月くんがカップをテーブルに置く。


「可愛い」


そんなくすぐったくなるような呟きのあと、再び繋がれた私の手────。



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