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宵闇
第21章 月影
「ここに入るのは初めてだね」
葉月くんが、私の部屋を見渡して言った。
「……だね」
手はまだ繋がれたまま。
私の意識はそこにばかりいっている。
「琴音?」
名前を呼ばれた拍子に思わず手を強く握ってしまい、ふっと笑われた。
逸る気持ちを見透かされているようで、恥ずかしくなる。
「……あのさ、少しだけ話していい?」
そんな私をよそに、葉月くんが静かに聞いてきた。
思ってもいなかった言葉に、え? と彼を見上げる。
「あんなふうに煽っておいてなんだけど……怒る?」
「あ、ううん……!」
私は首を振った。
あらためて話っていったい何だろう──すごく気になる。
「ありがとう」
ちゅっと軽く口づけられ、ぎゅっ、と抱き締められ──私はそのままベッドに座らされた。
葉月くんも隣に座る。
「……ちゃんと、言葉にして伝えておきたいなって思って」
真面目な口調。
表情もそう。
私は黙ってこくんと頷いた。
琴音、と私の名前を口にしながら、葉月くんが私の手に自分の手を重ねる。
「たくさん、話をしようね」
そう言って、私を見つめてくる。
「僕はずっと琴音のことを愛するよ。約束する」
「……葉月くん」
「信じてくれる?」
もちろん、深く頷いた。
「……でもね。もしこれから先不安になったり、わからなくなったりしたときはちゃんと正直に言って?」
「え……?」
「僕を信じてないの? なんて言わないから」
「葉月くん……」
「何回だって言うから。琴音の不安をなくせるように、その度に何度だって伝えるから」
真っ直ぐな、葉月くんの目。
私を映す、綺麗な瞳。