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宵闇
第21章 月影


……彼の、その数年。

私なんて、自分の想いに気づいてそれが通じるまで、ほんの数ヶ月だった。
それでも、きっと叶わないと思いながら抱くその感情はつらく、苦しくて。
なのに、葉月くんは私の何倍の時間を、その苦しさと共に過ごしてきたんだろう。
どれくらいの想いを、私だけに向けてきてくれてたんだろう────。


「……夢なんかじゃないよ」


思わず、漏れた言葉。
唇に触れていた葉月くんの指先が、まるで驚いたかのように急に離れる。


「葉月くんと私はもうこれからずっと一緒だよ?」


私のこと、ずっと待っていてくれた。
私が想いを自覚するまで、待っていてくれた。


「……葉月くんのこと、もっと教えて?」


私が知らなかった、そのときの葉月くん。


「葉月くんの全部、私……ちゃんと受け止める」


まだ聞かされていない葉月くんの心があるのなら、それも。


「全部知って、一緒に感じたい」


こみ上げてくる感情。
沸き上がってくる衝動。


葉月くんに抱きついて、耳元で囁く。


「葉月くんの全部……私が欲しい────」


そして、苦しそうに息を吐かれた直後だった。
私の身体が強く抱き締められる。
それは本当に、壊れてしまいそうなぐらいの強さ。
でもその強さが、葉月くんの想いだと感じた私はされるがままになりながらも、彼の背中に回した両手にさらに力を込めた。


「……っ……あげるよ……!」


溜め息のような、葉月くんの言葉。


「琴音に全部、僕を────」


それは、眩暈がするほどの感覚。
例えればそう──絶頂感に似た幸福感。

……身震いが、するほどの。


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