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宵闇
第21章 月影
葉月くんが、私にあげるって言ってくれた。
葉月くんのそのすべてを、私にくれるって────。
ああ……と、私の口からも溜め息が漏れる。
嬉しくて、幸せで──どんな言葉でこの気持ちを言い表せばいいのかわからないほどで。
私が知らなかった葉月くんの気持ち。
全部聞いて、私のものにする。
葉月くんから私への数年間の想い。
全部もらって、そして、その想いごと葉月くんを抱き締めたい────。
緩められた腕。
葉月くんが静かに唇を寄せてきた。
ゆっくりと、重なる。
離されたあとも、口元を見つめながら唇を指で辿ってくる。
「夢じゃないよ……?」
そっと呟くと、視線を合わせてきた。
前髪の隙間から覗く、その綺麗な瞳。
──不意に。
葉月くんが笑う。
無邪気な子供のような、それだった。
「……っ……!」
心臓が、跳ねた。
思わず目を閉じた私の唇にまた唇が重ねられる。
「琴音」
離されて、名前を呟かれ、また、しっとりと押し当てられ。
……また、離されて。
「欲しい……」
その言葉にそっと目を開けた。
ベッドの上の私の手に自分の手を重ねて。
指と指を絡ませるように繋いで。
まるで甘えるように、いい? と続ける葉月くん。
私は、こくんと頷いた。
……私も待ってたから。
そうされるのを────。