この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
宵闇
第22章 epilogue
琴音────。
僕は君を照らせていたの?
僕も……君を救えていたの?
そうやって君はいつも僕の心を満たしてくれて。
「……僕だって琴音にいつも救われているよ」
彼女の言葉につられるように無意識のうちに開いていた口。
「私に?」
琴音が、目を開けて僕を振り返り
「葉月くんが?」
と、首を微かに傾げる。
不思議そうに。
「そうだよ?」
笑みを浮かべて彼女を見ると、その視線を受け止めた彼女もまた微笑んで、そのまままた月を見上げた。
「……ずっと、夜がくるのが嫌いだったんだ」
ぎゅっ……と琴音を抱くその手に少し力が入った。
「……夜がきて、あたり一面が暗くなると、それに呑み込まれてしまいそうで」
独り言のように呟く。
「まるで取り込まれてしまいそうな」
そんな、深い闇────。
「……でもどうしたらいいかわからなくて」
どこに行けばいいのかわからなくて。
「そのときの自分の気持ちと……なんだかあまりにも重なりすぎて」
でも、逃れる術などどこにもなくて。
ただひたすらに堕ちていくようで。
「つらくて」
小さく漏らした息。
「……苦しくて────」
震えてしまった声。