この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
宵闇
第22章 epilogue
──不意に。
「……今も?」
僕の独白をそれまで黙って聞いていた琴音が、前に回している僕の腕をそっと抱き締めるようにして、前を向いたまま言った。
今────。
少しだけ、間を置いて。
「……今は、そんなことないよ」
だって琴音が僕を救ってくれたんだ。
何度も、何度も──たぶんきっと君は意識せずにそれをし続けてくれた。
「琴音が、僕を愛してくれたから」
そう──理解してくれたから。
「僕は救われたんだ」
だから僕が闇に取り込まれることは、きっともう──無い。
「……そうなの?」
「そうだよ?」
僕に寄りかかったままで言った琴音の顔を見下ろしながら答える。
「そっかあ……」
琴音のその、笑顔────。
そう。
それは僕を──僕のすべてを明るく照らす、ひかり。
「私も葉月くんを助けられたの?」
ふふっ、と幸せそうに笑う。
「……そうだよ」
僕の言葉に、表情を柔らかく緩ませてゆっくりと目を閉じる。