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宵闇
第22章 epilogue
……そうだよ、琴音。
君へのいろいろな感情に身動きができなくなったときもあった。
けれども────。
君が僕に好きだと告げてくれたとき
君と初めて身体を繋げたとき
離れたくないと君が泣いたとき
自分をちゃんと見てほしいと、そう言ってくれたとき────。
たくさんのそんなときが、僕を救ってくれたんだ。
「……これからもたくさん話そうね」
僕のその呟きに、返事はない。
「琴音?」
彼女を見ると、僕に身体を委ねた姿勢のまま……軽い寝息を立てていた。
「……寝ちゃったのか」
そのあどけない寝顔。
唇をそっと、指で辿る。
「……ん」
それが、笑うようなかたちを作った。
可愛さに、思わず口元が緩む。
指を離し、琴音が見ていた月に視線を送った。
「……ほんとだ」
目が離せなくなりそうな──それほどまでの美しさ。
……ねえ、琴音。
「まずは何から話そうか」
君が目覚めたそのときに。
「やっぱり……名前かな」
その名を呼ぶと、いつも僕は優しくなれた。
その名の持つ響きもあるのか────。