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宵闇
第6章 揺れる
「……何ですか」
俯きながらその後ろ姿にかけた言葉。
先輩が振り向いた気配。
けれど目を合わせることはできなかった。
「何ですか、って──昨日から電話も出ないしメールも無視だし。だからこうやって直接来たんだけど」
「……それは、ひとりで少し考えたかったから」
「は? 何をだよ」
何を、って────……。
……先輩はほんとにわからないんだろうか。
私がどんな気持ちでいるかなんて、考えてもくれないんだろうか。
「帰り、昇降口で待ってっから」
溜め息をつきながら先輩が言う。
私は下を向いたまま首を振った。
今は先輩とふたりきりになりたくなかった。
「……何で」
けれどそんな私の態度に苛ついたのか、低い声で呟きながら腕を掴んできた。
咄嗟に思い出した、昨日先輩にされたこと。
まざまざとその記憶が蘇り、全身が強張る。
激しくなる鼓動。
──っ、やだ。怖い……!
そんな感情に襲われ、たまらずぎゅっと目をつぶる────。