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宵闇
第6章 揺れる


そのときだった。


「──離したらどうですか」


突然聞こえてきた声におそるおそる目を開けると、私を庇うようにして先輩とのあいだに立っているその人の背中が視界に入った。
村上くん……と思わず呟く。


「……誰だよお前」


先輩の意識は完全に村上くんへと向いているようだった。
解放された腕をすぐに引き戻す。


「友達です」

「関係ねーだろ。どっか行けよ」

「でも桜井、嫌がってるから」


ちら、と村上くんが振り向いて私を見る。


「……は? 何なのお前。うざいんだけど」


先輩が苛立った口調になっているのに気づいた私は、慌てて村上くんに言った。


「ごめん、大丈夫だから……!」

「いや、でも────」


そんな私たちを見ていた先輩が、何か気づいたかのように口を開いた。


「……ああ、そういうこと?
お前、琴音が好きなの?」


揶揄したようなその口調。
どくん……と心臓がひときわ大きく波打った。


「悪いけど、琴音は俺の彼女だから。
部外者は黙って────」

「やめて先輩!」


私は思わず先輩を止めた。
もう聞いていられなかった。


「わかったから……!
一緒に帰るから、だからもうやめてっ」


ふたりの間に入り、先輩を村上くんから遠ざけるように身体を押す。

先輩は私の顔を見てしばらく黙っていたけれど、そのまま立ち去ってくれた。


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