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宵闇
第8章 三年後
あの先輩────。
そう、蓮先輩と別れた日。
タイミングよく電話をくれた加奈に縋るように泣きついた。
慌てた加奈がすぐに来てくれて、その日は彼女の家に泊まらせてもらった。
『遠距離は無理だ、って言われてふられた』と伝えると、一緒に泣いてもくれて。
……さすがに、いろいろ言えないこともあったけど、根掘り葉掘り聞かずに、ただそばにいてくれたことが嬉しかったことをよく覚えている。
「もうそろそろ次の相手探してもいいんじゃないかなあ~」
そんな、納得いかなさそうな加奈の言葉に、村上くんが口を挟んだ。
「んなこと言ったって本人にその気ねーんだから、外野がどうこう言ってってしょうがねーじゃん」
「えー、でももったいないよ琴音いい子なのに~!」
けれど負けじと彼に向かって反論する加奈。
制するようにその腕をとり、加奈、と呼びかけた。
すぐに視線を私へと戻した彼女に
「ありがと、いろいろ心配してくれて」
「琴音~」
「でも、もうちょっといろいろ考えたいんだ。
だから今はまだごめんね?
その気になれたらちゃんと加奈に言うから」
ね、と笑いかける。
途端に、琴音~と甘えるような声を出し、テーブルを挟んでるのにそのまま私に抱きつこうと身を乗り出してきた加奈を、村上くんが慌てて、危ない! と制止した。
思わず笑ってしまった私を見て、やがて他のふたりも笑い出す。
三人でいると、いつもこんなかんじだった。
先輩と別れたあと、ずっとその存在に──一緒の時間に、私は癒されていた。