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宵闇
第8章 三年後

「ただいま」
翌日。
家でそわそわしながら葉月くんの帰りを待っていると聞こえた、待ちに待ったその声。
玄関に飛び出す。
「おかえり葉月くん!」
「……琴音ちゃん」
私を見る、葉月くんのその笑顔。
変わらないなあ……とつられて笑顔になる。
「お帰りなさい、葉月くん」
キッチンで料理中だったママも玄関に顔を出した。
「ただいま、雪乃さん」
そのまま、ふたりは少し話し出した。
私は黙って、ママを見ている葉月くんを見る。
……あれ。
この前会ったのっていつだったっけ?
なんだろう。前から大人っぽかったけど、今は少年ぽさもすっかり抜けて、なんていうか────。
「どうしたの? 琴音ちゃん」
見ている私に気づいたらしい葉月くんが不意に視線を流してきたので、思わずどきりとしてしまった。
「あ、ううん……!
えっと、葉月くん……なんだかさらにかっこよくなったなあ~と思って!」
慌てながらも口にした言葉に、ははっと声をあげて葉月くんが笑う。
「琴音ちゃんもさすがに大人っぽくなったよね~。
もう20歳なんだっけ?」
そうだよ~と答えながら、でも、さすがにって──それちょっとひっかかるんですけど? と突っ込みたくなったときだった。
「久々に賑やかになったわね!
もうすぐお父さんも帰ってくるから、琴音、お台所手伝って」
キッチンに戻っていくママにそうお願いされ、はあい、と返しながら、ふふ、と葉月くんに笑いかけて私もキッチンへと向かう。
テーブルを見ると、葉月くんの好きな料理がいっぱいだった。
「なんか……やっぱり四人っていいよね!」
私の言葉にママが優しく微笑んだ。

