この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
宵闇
第9章 溶ける
今まで聞いたことのないような葉月くんの声。
話すことを遮られた私は、葉月くんの方に顔を向けた。
「……どうしたの? 葉月くん」
私を見ているその目はなんだかとても苦しそうで。
「なんで笑ってるの」
「え?」
私、笑ってた────?
……気づかなかった。
思わず触れた、自分の頬。
「なんで、そんなこと笑って言うの」
再び聞いてくる。
つらそうな表情と、声。それを変えもせずに。
「あ、だってもう終わったことだし────」
「……終わったこと?」
目を細めるようにして問うてくる葉月くん。
こんな真面目な顔、今まで見たことあっただろうか。
「琴音ちゃんの中ではまだ終わってないんじゃないの?
終わらせることができてないんじゃないの?」
そして、問いかけは続いた。
え? とその言葉の意味するであろう内容に心臓が波打つ。
図星をつかれたからだろうか──急に高ぶってきた感情。
こみあげてくる思いは、止められるようなものではなかった。
「……っ……なんでっ」
声が詰まる。
……何も知らないくせに。
あのときのことなんか葉月くん何も知らないくせに──なんでそういうことが言えるの?
「……葉月くんに何がわかるの」
だっていなかったじゃない。
葉月くん、いちばんいてほしかったときにそばにいてくれなかったじゃない。
なのにそんな、何でも知ってるみたいな言い方どうしてできるの────?
私の中でぐるぐると渦巻く、先輩に──そして葉月くんに対する感情。
「そういうの、誰かに話せた?」
「……話してないよ」
「話してないって──じゃあずっと自分の中だけで?」
──一気に爆発した。