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宵闇
第9章 溶ける
「……え、やだもう……何これ……っ」
あはは、となぜか顔が笑顔を作ろうとするも、やっぱりうまく笑えない。
「そんなふうに無理しないで」
ね? と、それはとても静かな囁き。
……いつもそう。
葉月くんはいつも、優しい。
いろいろため込みがちな私をわかってくれる。気遣ってくれる。ほっとさせてくれる。
今も、そんな葉月くんの優しさに私の心の中の閉ざしていた部分がほどけてしまいそうになっている。
ううん──もう、完全に緩みかけてしまっている。
そして私はその衝動にすべてを任せた。
「……ほんとは……ほんとはね葉月くん────」
「うん。いいよ? 全部言って?」
葉月くんにそう促され、誰にも言えなかったあのことが──本当は今も苦しくて、この3年半ずっと苦しくて仕方なかったことが、緩んだ心の隙間からじわりとにじみ出してくるのがわかった。
どんなに考えても、答えがわからなくて。
どうすればよかったのか、全然わからなくて。
もう考えることすら苦しいのに、考えないと……答えが見つからないと、前にも進めないような気がして。
でも、どうしてもそれを見つけられなくて、ひとりでぐるぐると同じ場所でもがき続けていたような時間。
……ねえ、葉月くん。
もう葉月くんに甘えてしまってもいい?
答えを一緒に探してくれるって……探してくれなくてもこんな私を否定しないでくれるって……そう信じてもいい────?