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DIABOLIK LOVERS ~Another~
第1章 餌の少女
「うん♪ バッチリ見てあげたよ? まるで、僕にキスされるのを心待ちにしてるみたいだったなぁ」
「そっ……そんな顔してたの?」

少女の赤くて熱くなった頬を、ライトは愉快そうに笑いながらツンツンと指で啄く。
そして、徐ろに少女の後頭部に手を回すなり、グイッと力強く引き寄せた。

「っ!」

引き寄せる際に足がよろめき、アンバランスな態勢になったところをライトは背中に腕を回して更に強く抱き寄せる。
あっという間に、少女はライトの腕の中に囚われた。

「ライトっ……」
「ねぇ、僕にキスしてほしいの?」

お互いの呼吸を感じられるほどの近距離で見つめ合う。。
唇に彼の吐息が当たっている。
ライトの強い視線が、思考を絡め取る。

「それとも、牙がいい?」
「…………」

――――これはいつもの事だ。
ライトと二人きりになると、いつもこんなやり取りがある。
赤の他人同士なのに、この家に同棲して十数年。
同い年であるためか、幼い頃から何でも一緒にして過ごした。
同じ学校で、同じクラス。
性格、好物…………お互いの事は何でも知っていた。
彼自身にも、学校で彼が起こした小さな事件にも、嫌悪感を抱いた事は一度もない。
何でも一緒にして過ごしてきた相手との、唯一の違い。それは――――

「ねぇ、答えてよ。キスと吸血、どっちがいい?」

人間と、ヴァンパイア。
餌と、捕食者。

「……私は、吸血がいい」
「んふ、そうこなくっちゃ」

彼の目が細められる。
いつも、そう。
従順で大人しい餌を前にして、飢えた者は捕らえずにはいられない。
その上、自らを差し出す餌ほど滑稽なものはない。
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