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一夜の愛、人との愛
第10章 透明な選択
「皆、顔を上げなさい」
2人の天使が立ち上がり、羽を仕舞うと静かに顔を上げた。
真理亜も、そっと上体を起こす。
荘厳な声に圧倒されながら、新たに対面する天使の姿を見やる。
その天使は静謐な表情のまま4人の前の床の一点を見つめている、その瞳は青銅色で底が見えない。銀色の髪は光の加減では白にも金色にも見えて、美しい絹糸のように背中に流れている。白いローブの腰の辺りを金色の大きな金具で止めた出で立ちは、神々しい絵画を切り取ったような迫力があった。
その天使は、胡座のまま顔を上げない黒い囚人をチラリと見ると、ゆっくりと唇を開く。
「待たせてすまなかった。そこの"穢れ"の後処理をしていてね」
無言のまま、クレイルが小さく頭を下げる。
座ったままのザレムは身動き一つしない。
「クレイル」
「はい」
「私を呼んだのは、"穢れ"の消滅のためか?」
「はい」
「では、なぜ、そこに人間の女がいる」