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一夜の愛、人との愛
第10章 透明な選択
「あのっ……待ってください!」
イエナリアが息を小さく吸った瞬間、真理亜は耐えられず声を上げた。
意外な事態にコーラルとクレイルが目を見張る中、イエナリアだけは動きをピタリと止めて真理亜を見つめる。
「何ですか? 人間の女よ」
「あの、私…。聞きました。"浄化"されて、全てを忘れて、もし、……子供を孕んでいても、全ては無かったことになって、人間の世界に帰れるって」
真理亜の指が小さく震え、自然と顔が俯いていく。
何を言っているの、私は。
どうして言っているの、私。
自分の世界に帰ろうと決めたのは、自分なのに。
それなのに―――。
「でも、……だからっ、記憶を失っても構いません。最後に、どうしても聞きたいんです」
言っちゃいけない気がする。
言ったら私、帰れなくなる気がする。
(それでも、私は言う!)
真理亜は顔を上げた。
「ザレムは、一体、何をしたんですか?」