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一夜の愛、人との愛
第10章 透明な選択
「し、りませんでした。……私、これまで、地震や災害は、自分達に対する天罰だと、思ってました」
ポツリと呟いた真理亜の声が、謁見の間に重く響く。
誰もが無言で、沈黙に包まれた中、不意に男の笑い声が空間を揺らしだした。
「っくくくく、……っははははははは!」
笑っているのはザレムだった。
胡座の足を解くこともせず、拳を開くこともせず、彼はただ、可笑しそうに笑い出し、顔を上げた。
その金色の瞳が、カッと見開かれて真理亜を捕らえる。
「いかにも、人間様らしい下衆な発想だな。"自分達のせい"、だと?」
「……ッ」
爛々と光る目が、彼女を縛り付けるように強い力で睨み据えてくる。
真理亜は反射的に自分の身体を両手で包んだ。
「俺達が、歴史を守り、種族を守り、人間さえ守っている、この状況で、お前らは自分達に都合の悪いことが起これば、不幸を嘆き、落胆し、最後には"自分達のせい""神の考えることは分からない"で済ませようとする。自分達が時の流れの一部に過ぎないのを忘れて、思い上がった信念で、耐え忍ぶ自分達に酔って甘えて、後は理解の放棄だ。……言っとくがな、神様なんつーのは、てめーらのために怒ったり嘆いたりする余裕は無いんだよ!」
噛み付くような声が、建物を震わせる。
クレイルが片手を素早く持ち上げるのを、祭壇の奥のイエナリアが瞬き1つで止めた。神格を司る天使だけは、事態を、静観している。
真理亜がザレムの剣幕に押され、へたりそうになるのを、背後からコーラルの手が素早く支えるも、彼女はザレムから目を逸らせずにいる。
「じゃあ…、なんで?」
「あ?」
「なんで、地震なんて起こしたの!!」
真理亜が声を張り上げた。
25年間生きてきて、こんなに強く人に恫喝したのは初めてだ。
無言で自分を睨むザレムに、真理亜は唇を噛んで足を踏みしめる。
「地震で、どれだけの人が死んだと思ってるの? どれだけの人が悲しんだと思ってるの!? 建物の中で、逃げきれずに事切れた人の気持ちが、貴方に理解できるの!? その家族の気持ちは? 逃げ切ったと思ったら、海から津波が来た時の、人の絶望感が、貴方には分かるの!!??」
叫ぶような真理亜の声に、ザレムが太腿の上の拳を強く握りしめた。
「お前らを助けるために、決まってんだろうが…!」
「…!」
ポツリと呟いた真理亜の声が、謁見の間に重く響く。
誰もが無言で、沈黙に包まれた中、不意に男の笑い声が空間を揺らしだした。
「っくくくく、……っははははははは!」
笑っているのはザレムだった。
胡座の足を解くこともせず、拳を開くこともせず、彼はただ、可笑しそうに笑い出し、顔を上げた。
その金色の瞳が、カッと見開かれて真理亜を捕らえる。
「いかにも、人間様らしい下衆な発想だな。"自分達のせい"、だと?」
「……ッ」
爛々と光る目が、彼女を縛り付けるように強い力で睨み据えてくる。
真理亜は反射的に自分の身体を両手で包んだ。
「俺達が、歴史を守り、種族を守り、人間さえ守っている、この状況で、お前らは自分達に都合の悪いことが起これば、不幸を嘆き、落胆し、最後には"自分達のせい""神の考えることは分からない"で済ませようとする。自分達が時の流れの一部に過ぎないのを忘れて、思い上がった信念で、耐え忍ぶ自分達に酔って甘えて、後は理解の放棄だ。……言っとくがな、神様なんつーのは、てめーらのために怒ったり嘆いたりする余裕は無いんだよ!」
噛み付くような声が、建物を震わせる。
クレイルが片手を素早く持ち上げるのを、祭壇の奥のイエナリアが瞬き1つで止めた。神格を司る天使だけは、事態を、静観している。
真理亜がザレムの剣幕に押され、へたりそうになるのを、背後からコーラルの手が素早く支えるも、彼女はザレムから目を逸らせずにいる。
「じゃあ…、なんで?」
「あ?」
「なんで、地震なんて起こしたの!!」
真理亜が声を張り上げた。
25年間生きてきて、こんなに強く人に恫喝したのは初めてだ。
無言で自分を睨むザレムに、真理亜は唇を噛んで足を踏みしめる。
「地震で、どれだけの人が死んだと思ってるの? どれだけの人が悲しんだと思ってるの!? 建物の中で、逃げきれずに事切れた人の気持ちが、貴方に理解できるの!? その家族の気持ちは? 逃げ切ったと思ったら、海から津波が来た時の、人の絶望感が、貴方には分かるの!!??」
叫ぶような真理亜の声に、ザレムが太腿の上の拳を強く握りしめた。
「お前らを助けるために、決まってんだろうが…!」
「…!」