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一夜の愛、人との愛
第10章 透明な選択

真理亜がザレムを見つめた。
罪人の苦味を孕む言葉が真理亜の言葉を奪い、痛みを訴える声が真理亜の声を失わせた。
はっとしてクレイルとコーラルを見ると、2人共に目を伏せている。
その所作は、彼らもまた、ザレムの訴えを一度は耳にしていた事実を真理亜に伝えた。


「俺には見えた。地層の動きと、数年後の大地震によるマグマの流れが! 半人前の天使に予知の力は無いなんてのは嘘だ! なのにセルティエルに訴えても、返ってきたのは"異端の神問を受けたくなれば黙っていろ"だ! だから俺は、お前らの住む星を救うために、禁域に1人で入った!」


強く吐露するザレムに目を奪われた真理亜は、彼の発する音に隠された疼きに気がつく。
それは慟哭(どうこく)だ。
彼の言葉は、ぶつけどころの無い、深い慟哭を訴えている。
真理亜とザレムの視線が、強くぶつかり絡み合う。


「俺が、あの時、やらなかったら、数年後の地殻変動で、今の5倍以上の被害が出てた! だからッ―――」


「そこまでだ、"穢れ"」


凪いだ声音が、ザレムの言葉尻をピシャリと叩き落とした。


祭壇の奥からローブを引きずりながら進み出るイエナリアに、だが引きつけ合った二人の視線は、簡単に外れない。


「もう十分、吠えたであろう。お前も"消滅"する身だ。異端の神問を危惧する必要もあるまい」


その言葉に、ザレムが忌々しげに顔を歪めて、振り切るように真理亜から顔を逸らした。


「人間の女よ」


白いローブの男の声に、真理亜も複雑な表情のまま、その顔を天使へ向けた。


「理解できましたか?」


「……」


「彼は半人前の身でありながら、貴方の住む星に自分の勝手な思い込みで災いをもたらした。そして、幽閉の罪を受けると、彼はエデンを抜け出し、貴方の部屋のベランダへ逃げ込んだ」


イエナリアが真理亜を見つめたまま、1つゆったりと瞬いた。


(!)


途端、真理亜が目を見開いた。



脳裏で、カメラのフラッシュのような白い光がババッと断続的に弾けた。







―――お前の心臓の鼓動、感じる









――キモチイイんだろ?










―ヤるぞ、












 マ  リ  ア










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