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一夜の愛、人との愛
第10章 透明な選択


「ッ…!」


思わず真理亜が自分の口元を両手で抑え背中を丸めた。

はっとしたコーラルが、反射的に彼女を抱き寄せ、その顔を覗き込む。

断片的に流れこんできた映像は、何だったのだろう。

まるで、今ここで、服を剥ぎ取られて身体中を撫で回されたような生々しい感覚だ。



(これって・・・)



唖然として顔を黒い翼へ向けると、ザレムの険しい横顔を見つめる。



(・・・)



「少し、思い出したようですね」



イエナリアの声に、彼女はのろのろと顔を上げた。



口元で両手を握りしめ、小さく身体を震わせながら、神聖な統率者を見つめる。



「大丈夫。"浄化"すれば、全ては元通りです」



『全ては元通り』



熱のこもらない、優しく宥めるような声に、真理亜は何か言い知れぬ不安を感じて、思わずコーラルを見た。



彼は小さく笑って真理亜を励ますように頷く。



この彼の笑顔も、



労るように自分を見ている銀髪の天使の眼差しも、



項垂れる黒い天使の行いさえも、



私は、忘れる。



全てが、記憶から消される。



私は、今、何をしたいのだろう。



何をしたいと、願っているのだろう。





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