この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
一夜の愛、人との愛
第12章 穢れた天使は夢を見る


  *  *  *


『今日、謁見の間で、イエナリア様に言われて』

聞こえた言葉に、ザレムが俯いたまま眉を強く寄せた。
まさかの単語が紡がれて、これは逃れられないと悟る。
この建物で、神格長の言葉は絶対だ。

(めんどくせーな)

がっくりと肩を落として天を仰ぐザレムの耳に、真理亜の言葉が続く。

『地下牢が一番安全だけれど、行くか行かないかは、私の判断に委ねる…って』
『……そして、貴方は選んだのですね』
『はい』
『貴方はご存知ないのでしょう。あの方の名前を出されたら、私達に拒否することが出来ないことを』

返す見張りの声が苦笑に満ちている。
それはそうだ。
薄壁1枚隔てた、地下牢の奥の自分にさえ、真理亜のかぐわしい匂いは届く。
目の前で語られて平然と会話を交わせる忍耐力を、誰か褒めてやれとさえ思う。

『では…、私にも止めることは出来ません。それと、私達が待機している部屋の中には、貴方をお招きすることは出来ないので、それだけはご理解頂けたらと思います』
『私達?』
『もう1人、部屋の奥に見張りがおります』

その会話を聞きながら、ザレムは観念した、とばかりに深く長い吐息を零した。





幾つかの会話の後に、耳が、自分の居る地下牢の奥へ近づく女の足音を捉える。
そこへ来て、漸く、ザレムはイエナリアの魂胆に気づいた。

(なるほど、そこの壁一枚か)

天使にしか見えず、触ることも出来ない、地下牢の壁。
だが、その壁は、確かに外界との空気を一部遮断している。
遮るものが何も無い空間で無防備に過ごすよりは、気休めにはなるかもしれない。
それに、この場所ならば、罪人は繋がれているため、真理亜に手出しは出来ない。
安全という意味で言えば、安全な空間だ。



真理亜の気配が近づき、蠱惑的な匂いが濃くなってくる。
壁の厚みは薄いままだ。
見張りが気を利かせて、厚くしてくれてもいいものを。
恐らく、あのお高く止まった神格長が何を意図しているか、気付いていないのだろう。


/226ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ