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一夜の愛、人との愛
第14章 求められる決断
ザレムの前に立ったイエナリアは、一つ高い壇上から彼を見下ろし、徐ろに口を開く。

「穢れよ。貴方に試練を与えます。ただし、その試練は、隣にいる人間の女が許可して初めて成り立つ試練となります」

その言葉に、俯いたままだったザレムが僅かに顔を上げかけた。

男は目の前の白い硬質な床を見つめたまま、難しい顔をしている。

この建物は白い。

何者にも汚されない純白の色彩を眺めながら、彼はエデンを統べる男の言葉を待っているようだった。

「裁きの森でイザヤの実を手に入れて戻ってくるならば、貴方は消滅を免れ、ケダルへの追放と幽閉により、その身を留めることが出来るでしょう」

白い天使の言葉は、真理亜には、厳かな予言に聞こえた。

意味は分からないが、彼が条件を受け入れるならば、その存在が消滅することは無いらしい。

だが、ザレムは床の一点を見つめたまま、動かず黙している。

たまらず、真理亜が、恐る恐る口を開いた。

「あの…」

その条件に沈黙する理由が、真理亜には分からない。

「森に行って、何かを手に入れるのに、どうして私の許可が、必要なんですか?」

その謎に答えたのは、黒を纏った天使だった。

「"イザヤの実は、1対の男と女が取りに行かねば手に入らない"」

「……」

「それが、裁きの森の掟だからだ」

答えながら顔を上げたザレムは、真理亜ではなく、まっすぐ正面にいるイエナリアを見上げた。
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