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一夜の愛、人との愛
第14章 求められる決断
「貴方は生まれた時から変わらない」

その言葉の響きに、ザレムが片眉を持ち上げて言葉を止めた。

「自由を好み、秩序を揺るがす魂は、次の一代のために、また必要とされる息吹です」

穏やかな声が、がらんとした謁見の間に響く。

「けれど、自由と無秩序は異なります。自由には責任が伴う。……貴方が、その意味を学ぼうという意志があるならば、或いは、その魂に価値を見出すことも出来るかもしれない」

イエナリアの言葉に、真理亜が不思議そうに瞬く。

何故か、この白い天使は、穢れた天使を好意的に見ているように感じる。

それどころか、もっと温かい感情の、これは―――。

(慈愛?)

例えば、全てを見据える立場にある天使は、それぞれの天使を愛情を込めて見守っている、ということなのだろうか。

真意を探ろうと目を細めた真理亜の視線を気にもとめず、その美しい天使はザレムへの言葉を続けた。

「だからこそ、これが貴方の試練です。そして、彼女の選択が鍵になる。二人で、決めなさい」

微笑を浮かべたまま、イエナリアはローブを掬いあげると、数歩後ろに下がった。

それでも正面から視線を逸らさないザレムに、真理亜が1歩、歩み寄った。
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