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一夜の愛、人との愛
第14章 求められる決断
イエナリアに視線を吸い寄せられて、真理亜が不思議そうに一歩、中央へ歩み寄った。
視界に入り込む真理亜の足に、だが彼女の心情には思いが及ばないザレムは、苦々しげに視線を揺らす。
一度俯いた彼は、少し考えてから唇を開いた。
「女」
イエナリアの真意を探ろうとしていた真理亜は、ぼんやりして呼びかけを聞きはぐる。
「マリア!」
「え、なに」
呼ばれて、はっとして振り返る。
慌てて振り向けば、強く自分を見上げてくる金色の瞳にぶつかった。
その獣じみた視線に少し顎を引きながら、彼女の意識が漸くザレム向けられる。
そして、苛立ちを隠さない男の声に、出会った頃のように怯えない自分に、真理亜は気付く。
(あれ・・・)
慣れたのか、慣らされたのか、大きな黒い翼にも、その先の鉤爪にも、獰猛さを孕む瞳の色にさえ、真理亜は怯えていなかった。
新たに感じた、自身の変化という謎に、ふっと瞬いてる真理亜に、ザレムは頓着しないまま口を開く。
「黙って俺の言うとおりにしろ」
「え?」
「自分の世界に戻れ」
「……」
何を言っているのか、と言い返そうとした真理亜が、向けられたザレムの視線に固まった。
男は、出会ってから初めて見る、真剣な表情で自分を見ている。
「何も聞くな。何も考えるな。黙って帰って全て忘れろ」
「どう、して…」
「お前を森には連れていけない」
「……」
「あの森は駄目だ」
有無を言わせぬ言葉に、真理亜が眉間に小さな皺を浮かべる。
視界に入り込む真理亜の足に、だが彼女の心情には思いが及ばないザレムは、苦々しげに視線を揺らす。
一度俯いた彼は、少し考えてから唇を開いた。
「女」
イエナリアの真意を探ろうとしていた真理亜は、ぼんやりして呼びかけを聞きはぐる。
「マリア!」
「え、なに」
呼ばれて、はっとして振り返る。
慌てて振り向けば、強く自分を見上げてくる金色の瞳にぶつかった。
その獣じみた視線に少し顎を引きながら、彼女の意識が漸くザレム向けられる。
そして、苛立ちを隠さない男の声に、出会った頃のように怯えない自分に、真理亜は気付く。
(あれ・・・)
慣れたのか、慣らされたのか、大きな黒い翼にも、その先の鉤爪にも、獰猛さを孕む瞳の色にさえ、真理亜は怯えていなかった。
新たに感じた、自身の変化という謎に、ふっと瞬いてる真理亜に、ザレムは頓着しないまま口を開く。
「黙って俺の言うとおりにしろ」
「え?」
「自分の世界に戻れ」
「……」
何を言っているのか、と言い返そうとした真理亜が、向けられたザレムの視線に固まった。
男は、出会ってから初めて見る、真剣な表情で自分を見ている。
「何も聞くな。何も考えるな。黙って帰って全て忘れろ」
「どう、して…」
「お前を森には連れていけない」
「……」
「あの森は駄目だ」
有無を言わせぬ言葉に、真理亜が眉間に小さな皺を浮かべる。