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一夜の愛、人との愛
第14章 求められる決断



出発は忙しなかった。



空の色が橙に変わるまでに森へ辿り着く必要があると言われ、謁見の間から出てすぐ、彼女はクレイルの部屋に通された。

コーラルやルシオに会うことは許されず、部屋で待つように、と言われ一人にされれば、流石に胸には不安が広がった。

後先考えず、半ば苛立ち紛れに宣言してしまった決断を、何度も考えなおそうとしては、それでも無かったことにして自分の世界へ戻ることは選べない気がして、真理亜は、音もなく溜息をつき表情を曇らせた。



そんな彼女の元へ戻ってきたクレイルは、1着の美しい洋服を持ってきた。
背中が切れていない、女性用の洋服だ。
着替えてから噴水の前に降りてくるように、と言い残して彼は再び部屋を去った。



胸の片側を斜めに止めるボタンがついた、チャイナ服のような上衣に、下は足首まで隠れるズボン。上下ともに、仄かに青みがかった優しい白で仕立てられている。

不安混じりに腕を通してみたが、意外と着心地は悪くなかった。
下着をつけることを許されなかった点だけは気になったが、「人間界のものを身につけていくと、異形のものに感付かれるから」と言われれば断念せざるを得ない。
代わりの配慮か、洋服の胸元は、揺れる膨らみを支えられるように、密着感のある素材で作られているようだった。ヌーブラのような、不思議な肌触りだ。

上衣が長めで、お尻を隠すくらいの丈があるので、下着を履いていないお尻も、気にしすぎなければ目立たないように感じられた。

ズボンの間に挟まるように入っていた白い靴を履くと、布製の、その履物は、まるでオーダーメイドであしらえたように、真理亜の細い足にピタリとフィットした。


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