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一夜の愛、人との愛
第16章 気配



  *  *  *



ぼんやりと揺れる光の中、木々の合間で立ち止まると、ザレムは、周囲の変化に視線を向けた。



エデンと違って、森の中からは、空が見えない。
かといって、この森で時を感じないかというと、そうでも無かった。
森は、闇を携えることで、来訪者に時の経過を告げていた。

"裁きの森"の中は、仄かに光る青白い光源に照らされていたため、当初ザレムが危惧していたよりは、歩きやすかった。蛍のような不思議な光の塊が、ゆらりと漂いながら、空間を移動しており、そのおかげで道なき道を確認しながら、二人は自分達の背丈の何倍もある木々の間を分け入ることが出来ていた。

だが、その光は、常に不変の代物でも無かった。

時計が無いせいで、時間は分からないものの、恐らく定期的に、幻想的な仄白い明かりは、赤黒く染まり出す。
そして暫くすると、森は必ず濁った闇に包まれていた。
直近1メートル程度は何とか視認できるものの、その闇に包まれると前に進むことが難しいため、周囲の明かりの変化に合わせ、ザレムも真理亜も、近くの木の根本に腰掛けて休みながら、歩みを進めている。



今また、光の色が急速に失われ錆びた血の色に取って代わり始めていた。
森に入って、何度目かの闇の気配に、真理亜も足を止めると、一つ小さな溜息を吐いた。

もうどれくらい、進んだのだろう。
周りの景色に変化が無さすぎて、きちんと進めているのか分からない。
どこか靄のかかった空間は、不思議な圧迫感があり、森に閉じ込められているような錯覚さえ感じさせる。

(それに…)

真理亜は、少し先で、木の幹に手を当て頭上を睨むザレムを見た。

森に入ってから、会話らしい会話をしないまま、黙々と歩き続けている。
暗くなってくると、無性に身体の疲れを感じる真理亜に、ザレムはいつも、「眠れ」と言い放ち、すぐさま目を閉じてしまう。だから毎回、話しかけることさえ躊躇われていた。
かといって、起きてから話しかけようとすると、真理亜が目を開ける時には、既にザレムは立ち上がって鋭い目で方角を確認しているのだ。
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