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一夜の愛、人との愛
第16章 気配

(獣め…)
あっさり自分達の素性を見抜く男に、自然と口調が固くなる。
「森に入ってから纏わりついてきた気配は、お前か」
「……さぁね。人間を狙う奴らは、この森には五万といる。ただ、俺は残飯にありつくより、最初の一口を楽しみたいってだけ」
「森の生き物は、人間を食う…」
思い出したように呟いた天使の言葉を受けて、男は小さく頷いた。
その余裕の態度に、ザレムは僅かに地を踏みしめる。背中の翼が、呼応して小さく震えた。
話題の中心に真理亜を置いている以上、ただ隣に座って満足する獣でもあるまい。
(勝手に持って行かせるか)
鋭い目つきのまま、ザレムは、面白そうに自分を眺める相手を観察した。
肘から下は、両腕共に白い毛皮に包まれ、その獣じみた手は赤子の頭を握りつぶせるほどの大きさだ。見えない掌には肉球がついているのだろう、指先の爪は黒く尖り、闇の中でも鈍く不敵に光って見える。
黒い袖なしジャケットは前を開けているため、胸筋から引き締まった腹部までが確認でき、膝丈のカーゴパンツからは、強靭なバネを思わせる細く筋肉質な脚が覗く。その脚は人間のものよりも、猫科の動物の後ろ足に形状が似ていた。
彼が本気で走りだしたら、ザレムが空を飛んだとしても、捕まえるのは厳しいに違いない。
あっさり自分達の素性を見抜く男に、自然と口調が固くなる。
「森に入ってから纏わりついてきた気配は、お前か」
「……さぁね。人間を狙う奴らは、この森には五万といる。ただ、俺は残飯にありつくより、最初の一口を楽しみたいってだけ」
「森の生き物は、人間を食う…」
思い出したように呟いた天使の言葉を受けて、男は小さく頷いた。
その余裕の態度に、ザレムは僅かに地を踏みしめる。背中の翼が、呼応して小さく震えた。
話題の中心に真理亜を置いている以上、ただ隣に座って満足する獣でもあるまい。
(勝手に持って行かせるか)
鋭い目つきのまま、ザレムは、面白そうに自分を眺める相手を観察した。
肘から下は、両腕共に白い毛皮に包まれ、その獣じみた手は赤子の頭を握りつぶせるほどの大きさだ。見えない掌には肉球がついているのだろう、指先の爪は黒く尖り、闇の中でも鈍く不敵に光って見える。
黒い袖なしジャケットは前を開けているため、胸筋から引き締まった腹部までが確認でき、膝丈のカーゴパンツからは、強靭なバネを思わせる細く筋肉質な脚が覗く。その脚は人間のものよりも、猫科の動物の後ろ足に形状が似ていた。
彼が本気で走りだしたら、ザレムが空を飛んだとしても、捕まえるのは厳しいに違いない。

