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一夜の愛、人との愛
第16章 気配

―――と。
男が、ふっと柔和に微笑んだ。
流れる空気が弛緩して、ザレムが気を抜いた一瞬だった。
引っ掛けたままの爪に不意に力を込め、雪豹は、真理亜の胸元から首筋までの布を一気に切り裂こうとした。
が、男の動きは、予想に反して食い止められる。
エデンの服は、柔らかそうな見た目とは裏腹に、凶器の侵入を防ぐ細かな繊維で、真理亜の身体を守っていた。一つ瞬いた豹は、その事実に、口元に浮かべていた笑みを深めると、乾いた唇をぺろりと舐めて、浮かぶ笑みを酷薄なそれに変えていく。
「おもしれー」
張り合うように笑って、直後、男は、真理亜の身体を片手で抱き上げ、肩に担いだ。
力の抜けきった真理亜の身体は、ぐにゃりと弛緩したまま、何の抵抗も無く男の肩に収まる。
その素早い動きにはっとしたザレムをよそに、豹は口角を持ち上げると、腰をかがめ、前傾姿勢で唇を舐めた。
「返して欲しけりゃ、追ってきな」
「! 待て!!」
反射的に足を踏み出すザレムを一瞥し、片眉を持ち上げたのを最後に、獣は地を蹴り、素早く躍動した。
傍を風が切ったかと思えば、ザッと揺れる木の葉の音を最後に、二人の姿が消えている。
振り向いた男の背中は、真理亜を連れたまま、暗闇の中へ溶けながら走り去っていた。
男が、ふっと柔和に微笑んだ。
流れる空気が弛緩して、ザレムが気を抜いた一瞬だった。
引っ掛けたままの爪に不意に力を込め、雪豹は、真理亜の胸元から首筋までの布を一気に切り裂こうとした。
が、男の動きは、予想に反して食い止められる。
エデンの服は、柔らかそうな見た目とは裏腹に、凶器の侵入を防ぐ細かな繊維で、真理亜の身体を守っていた。一つ瞬いた豹は、その事実に、口元に浮かべていた笑みを深めると、乾いた唇をぺろりと舐めて、浮かぶ笑みを酷薄なそれに変えていく。
「おもしれー」
張り合うように笑って、直後、男は、真理亜の身体を片手で抱き上げ、肩に担いだ。
力の抜けきった真理亜の身体は、ぐにゃりと弛緩したまま、何の抵抗も無く男の肩に収まる。
その素早い動きにはっとしたザレムをよそに、豹は口角を持ち上げると、腰をかがめ、前傾姿勢で唇を舐めた。
「返して欲しけりゃ、追ってきな」
「! 待て!!」
反射的に足を踏み出すザレムを一瞥し、片眉を持ち上げたのを最後に、獣は地を蹴り、素早く躍動した。
傍を風が切ったかと思えば、ザッと揺れる木の葉の音を最後に、二人の姿が消えている。
振り向いた男の背中は、真理亜を連れたまま、暗闇の中へ溶けながら走り去っていた。

