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一夜の愛、人との愛
第17章 感知
「……え」
胎児のように身体を丸めてから、真理亜は、自分の上から身体をどかした男に思わず目を向ける。
男は四つん這いから身体を起こし、膝を地面についたまま、真理亜の身体を見下ろしていた。
その視線は、横向きになったせいで露わになった左胸の傷口に注がれている。
「一対の男と女、か。そうか、……そうだったな」
忌々しげに舌打ちしてから男は呟く。
理由は分からないが、自分の身体が解放されたことに、真理亜は漸く震える息を吐いた。
右手で抱きしめるように左の胸を触れば、血が滲む傷口が、鈍い痛みを訴える。
「……ッ」
小さく漏れた声に、男の耳だけがピクッと動く。
依然として自分を眺めながら強張った表情を緩めない相手に、ゆっくりと後ずさりながら、真理亜は身体を起こした。
周りを見渡せば、自分の服が少し離れた位置に脱がされているのが見える。
改めて見た相手の姿は、人間にも獣にも見えて、まるで新手のコスプレでもしているかのようだ。
だが、自分の身体を掴んできた手や、今も膝をついて身体を支えている足が、作り物やぬいぐるみでは無いことは、真理亜にも分かっていた。
体育座りになって身体を庇うと、真理亜は静かに口を開く。
「イザヤの実を、知ってるの?」
「……」
男は彼女の問いに片眉を小さく持ち上げた。
数秒、黙りこんでから、男は溜息をついてから俯いた。
その耳が、何かに反応して何度か震えている。
「まぁ、いいか」
「え?」
「聞いてなかったってことにすれば、味見くらいは許されんだろ」
真理亜に告げたというより、自分自身に言い聞かせる言葉だ。
怪訝そうに首を傾げた真理亜の視界の中、男は再び顔を上げた。
その顔には、楽しげな笑みが浮かんでいた。
胎児のように身体を丸めてから、真理亜は、自分の上から身体をどかした男に思わず目を向ける。
男は四つん這いから身体を起こし、膝を地面についたまま、真理亜の身体を見下ろしていた。
その視線は、横向きになったせいで露わになった左胸の傷口に注がれている。
「一対の男と女、か。そうか、……そうだったな」
忌々しげに舌打ちしてから男は呟く。
理由は分からないが、自分の身体が解放されたことに、真理亜は漸く震える息を吐いた。
右手で抱きしめるように左の胸を触れば、血が滲む傷口が、鈍い痛みを訴える。
「……ッ」
小さく漏れた声に、男の耳だけがピクッと動く。
依然として自分を眺めながら強張った表情を緩めない相手に、ゆっくりと後ずさりながら、真理亜は身体を起こした。
周りを見渡せば、自分の服が少し離れた位置に脱がされているのが見える。
改めて見た相手の姿は、人間にも獣にも見えて、まるで新手のコスプレでもしているかのようだ。
だが、自分の身体を掴んできた手や、今も膝をついて身体を支えている足が、作り物やぬいぐるみでは無いことは、真理亜にも分かっていた。
体育座りになって身体を庇うと、真理亜は静かに口を開く。
「イザヤの実を、知ってるの?」
「……」
男は彼女の問いに片眉を小さく持ち上げた。
数秒、黙りこんでから、男は溜息をついてから俯いた。
その耳が、何かに反応して何度か震えている。
「まぁ、いいか」
「え?」
「聞いてなかったってことにすれば、味見くらいは許されんだろ」
真理亜に告げたというより、自分自身に言い聞かせる言葉だ。
怪訝そうに首を傾げた真理亜の視界の中、男は再び顔を上げた。
その顔には、楽しげな笑みが浮かんでいた。