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一夜の愛、人との愛
第18章 刻印

「……ッ!」
「おい、平気か」
ぶつかったのは、男の剥き出しの胸板だった。
慌てて立ち止まった真理亜の身体がよろめき、男の右手がグイと支える。
瞬間、再び左胸に走った小さな痛みに、俯いた彼女の表情が微かに険しくなった。
「マリア」
「え」
不意打ちで名前を呼ばれて、思わず顔を上げてしまう。
自分を覗き込む男の表情には、ザレムと対峙していた時の荒々しさは無く、ただ静かに悠然と見守るような余裕だけがあった。
ザレムや自分を襲った男のような金色では無い、僅かに青みがかった黒い瞳が、真正面から真理亜の顔を見詰めている。
「連れがいなくて不安か?」
「……」
あっさり言い当てられて小さく息を飲む。
瞳を覗かれ、絡まる視線で考えを読み解かれてでもいるようで、真理亜の胸に奇妙な心もとなさが広がっていく。
自然と下がりかけた視線を止めるように、男の右手が真理亜の顎にかかった。
「イザヤの実は、一人では取れない」
その言葉に、真理亜が目を僅かに見開く。
「どうして…」
思わず呟いた言葉に、数秒じっと真理亜を見つめていた男が、ふっと双眸を緩めた。
手を離し、数歩下がれば、小さく笑って周りの木々に視線を向ける。
その視線の先に、小さく開かれた崖らしき場所が見えた。
男は、その緑の開けた方へと足を踏み出しながら、口を開く。
「俺が何故、お前の名前を知っているか。何故、お前の目的を知っているか。……問題は、そこじゃない」
木々の間を抜けていく男を、真理亜も自然と追いかける。
「問題は、お前が目的のために、どこまで出来るか、だ」
「おい、平気か」
ぶつかったのは、男の剥き出しの胸板だった。
慌てて立ち止まった真理亜の身体がよろめき、男の右手がグイと支える。
瞬間、再び左胸に走った小さな痛みに、俯いた彼女の表情が微かに険しくなった。
「マリア」
「え」
不意打ちで名前を呼ばれて、思わず顔を上げてしまう。
自分を覗き込む男の表情には、ザレムと対峙していた時の荒々しさは無く、ただ静かに悠然と見守るような余裕だけがあった。
ザレムや自分を襲った男のような金色では無い、僅かに青みがかった黒い瞳が、真正面から真理亜の顔を見詰めている。
「連れがいなくて不安か?」
「……」
あっさり言い当てられて小さく息を飲む。
瞳を覗かれ、絡まる視線で考えを読み解かれてでもいるようで、真理亜の胸に奇妙な心もとなさが広がっていく。
自然と下がりかけた視線を止めるように、男の右手が真理亜の顎にかかった。
「イザヤの実は、一人では取れない」
その言葉に、真理亜が目を僅かに見開く。
「どうして…」
思わず呟いた言葉に、数秒じっと真理亜を見つめていた男が、ふっと双眸を緩めた。
手を離し、数歩下がれば、小さく笑って周りの木々に視線を向ける。
その視線の先に、小さく開かれた崖らしき場所が見えた。
男は、その緑の開けた方へと足を踏み出しながら、口を開く。
「俺が何故、お前の名前を知っているか。何故、お前の目的を知っているか。……問題は、そこじゃない」
木々の間を抜けていく男を、真理亜も自然と追いかける。
「問題は、お前が目的のために、どこまで出来るか、だ」

