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一夜の愛、人との愛
第4章 夜9時半のグリーティング
真理亜の歩調が、徐々に早くなる。
ヒールの音が高鳴るにつれて、真理亜の心臓の鼓動も高まっていた。


間違いない。
背後に誰かいる。


鞄を下げていた右手を自然に持ち上げて、両手で抱える。
後の足音が、自分の歩幅にピタリと合わせているのが聞こえる。


このままでは、追いつかれる―――!


小さく息を飲み、瞬時、真理亜は走りだした。


薄暗い公園を抜ければ、マンションの路地裏の細い砂利道に辿り着く。
砂利道を50mほど進んで右折すれば、マンション前の明るい通りに出るのだ。
そこまで行けば、流石に追手も何も出来まい。
それに、彼女の勘違いであれば、それはそれで、光のある場所まで行ければ安心出来る。


一気に公園の石畳を抜けて、砂利道にさしかかった。
スカートの裾を翻し、道の羽虫を片手で払いながら砂利に足を取られつつ必死に走る。
背後の靴音も、砂利道に侵入したのが聞こえた。


「あっ・・・!」


その時、真理亜のヒールが、砂利を踏み外し、


彼女は、前のめりに転んだ―――。



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