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一夜の愛、人との愛
第4章 夜9時半のグリーティング
「いった・・・」
右膝に感じた鋭い痛みに、顔を歪めながら両手をついて上体を起こす。
うつ伏せに転んだが、幸か不幸か足と手の甲を擦りむいただけで済んだようだ。
とはいえ、右膝はストッキングも破れて、僅かな月明かりでも赤い血が滲んでいるのが見える。
「っつー・・・」
膝を庇いながら体を起こそうとして、肩に触れた誰かの手に、真理亜は思わず大きく震えた。
反射的に振り返った彼女の目には、パーカーを被った男らしき人間の輪郭が見える。
知り合いでは無い。
知り合いは、自分を無言で追いかけることは無いし、黙って肩を掴んだりしない。
考えるより早く、体が反応していた。
相手の手を振り払い、スカートがよじれるのも気にせず、砂利の上を後ろに逃げようとした。
「キャッ・・・!」
次の瞬間、その影は、真理亜の両肩を掴んで、仰向けに彼女を押し倒してきた。
間髪入れずに、彼女の首筋に顔を埋めて吸い付いてくる。
「ひっ・・・」
言葉に出来ない嫌悪感に、真理亜は言葉も発せないまま、とにかく我武者羅に体を捻った。
相手を蹴ろうと足をバタつかせるが、相手の体が完全に伸し掛かり、身動き出来ない。
男の舌が、真理亜の首筋から顎までをベロリと舐め上げ、獣のような荒い息が口元にかかった。
「あーッ!」
気色悪さに、真理亜の口から悲鳴にも叫びにも聞こえる声が漏れる。
その時―――。
何か、黒いものが、襲撃者にぶつかった。
「!」
「いやっ・・・!」
急に、襲撃者が真理亜の上に、沈み込む。
真理亜を襲っていた人物は、ガクッとスイッチが切れた人形のように、真理亜の上にうつ伏せに倒れた。
力を失った相手を闇雲に押しのけて、真理亜は手探りで鞄を掴む。
足の痛みは感じなかった。
ただ、恐ろしさだけに突き動かされて、ブロック塀に指をかけながら何とか立ち上がると、笑いそうな膝を頼りに、彼女は路地裏から自宅前の道路まで、必死に這い出した。
気付けば、左の靴が無かった。
戻って取りに行く気には、全くなれなかった。
右膝に感じた鋭い痛みに、顔を歪めながら両手をついて上体を起こす。
うつ伏せに転んだが、幸か不幸か足と手の甲を擦りむいただけで済んだようだ。
とはいえ、右膝はストッキングも破れて、僅かな月明かりでも赤い血が滲んでいるのが見える。
「っつー・・・」
膝を庇いながら体を起こそうとして、肩に触れた誰かの手に、真理亜は思わず大きく震えた。
反射的に振り返った彼女の目には、パーカーを被った男らしき人間の輪郭が見える。
知り合いでは無い。
知り合いは、自分を無言で追いかけることは無いし、黙って肩を掴んだりしない。
考えるより早く、体が反応していた。
相手の手を振り払い、スカートがよじれるのも気にせず、砂利の上を後ろに逃げようとした。
「キャッ・・・!」
次の瞬間、その影は、真理亜の両肩を掴んで、仰向けに彼女を押し倒してきた。
間髪入れずに、彼女の首筋に顔を埋めて吸い付いてくる。
「ひっ・・・」
言葉に出来ない嫌悪感に、真理亜は言葉も発せないまま、とにかく我武者羅に体を捻った。
相手を蹴ろうと足をバタつかせるが、相手の体が完全に伸し掛かり、身動き出来ない。
男の舌が、真理亜の首筋から顎までをベロリと舐め上げ、獣のような荒い息が口元にかかった。
「あーッ!」
気色悪さに、真理亜の口から悲鳴にも叫びにも聞こえる声が漏れる。
その時―――。
何か、黒いものが、襲撃者にぶつかった。
「!」
「いやっ・・・!」
急に、襲撃者が真理亜の上に、沈み込む。
真理亜を襲っていた人物は、ガクッとスイッチが切れた人形のように、真理亜の上にうつ伏せに倒れた。
力を失った相手を闇雲に押しのけて、真理亜は手探りで鞄を掴む。
足の痛みは感じなかった。
ただ、恐ろしさだけに突き動かされて、ブロック塀に指をかけながら何とか立ち上がると、笑いそうな膝を頼りに、彼女は路地裏から自宅前の道路まで、必死に這い出した。
気付けば、左の靴が無かった。
戻って取りに行く気には、全くなれなかった。