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一夜の愛、人との愛
第1章 深夜2時のプロローグ
(え…、なんで…)


体が動かない。
男が、頭上に束ねた両手首から片手を離しても、口元を覆う掌を頬へ這わしても、真理亜の体は指を動かすどころか、声さえ出なかった。


(なに、これ…)


恐怖に息だけが微かに荒くなる。それでも、体は震えることも無かった。


「あーあ、こうすると、つまんねーんだよな」


乱暴な口調で呟いてから、男は少し考えて、上体を起こす。
仰向けで横たわる真理亜の腰を両膝で跨ぎ、膝立ちになると、闇の中で赤い唇が開いた。


「お前、名前は?」

「…真理亜」

「ふーん」

(…うそ、どうして)


真理亜の意志とは関係なく、勝手に言葉が紡がれる。
男は、闇の中で笑ったようだった。
自由が利かない真理亜の焦りをよそに、低く蠱惑的な声が彼女の視神経に釘をさす。




「いいか、マリア。



 叫んだら殺す。逃げても殺す。抵抗しても殺す。分かったな?」



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