この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
一夜の愛、人との愛
第5章 白亜の建物
ソファに腰を降ろした彼女に微笑み、彼は一度姿を消すと、濡らした白い布を持って戻ってきた。白い手袋は流石に外している。
「右足を、出して頂けますか」
彼女の前に跪き、傷口を見て少し表情を曇らせる。
俯く彼の顔を、美しい金髪が優しく隠した。
形の良い綺麗な手が、真理亜の傷口に、布をそっと押し当てた。
「っ・・・」
「痛みは一瞬です」
傷口を布で静かに拭われると、彼の言葉通り、鈍い痛みはスルリと消えていった。
ストッキングの穴は消えないが、傷跡は、ほぼ分からないくらい、綺麗に治っている。
自分の肌の変化に唖然とする真理亜に、顔を上げた男は微笑んで頷いてから、向かいの立方体のソファに腰かけた。
「少しは、落ち着けましたか?」
眼鏡の中の瞳が穏やかに細められる。
真理亜は僅かに目元を朱に染めながら頷く。
「良かった」
彼がスーツの内側から手袋を取り出しながら、口を開いた。
天使の名前はコーラル。
訳あって逃げ出した咎人・ザレムを追いかけて、真理亜の部屋に訪れた。
彼は、昨晩、ザレムが真理亜に接触したと推測している。
それは、真理亜のベランダに、ザレムの痕跡が残った空き缶が置かれていたことと、真理亜自身が今日体験した不可解な状況が証明しているらしい。
時折言葉を濁しながらも、コーラルは、突然の訪問と、誘拐まがいの一連の行動を真理亜に詫びた。
「こちらの不手際で、貴方を巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした」
丁寧に頭を下げた後、男は顔をあげると、眼鏡のブリッジを中指で押し上げた。
「右足を、出して頂けますか」
彼女の前に跪き、傷口を見て少し表情を曇らせる。
俯く彼の顔を、美しい金髪が優しく隠した。
形の良い綺麗な手が、真理亜の傷口に、布をそっと押し当てた。
「っ・・・」
「痛みは一瞬です」
傷口を布で静かに拭われると、彼の言葉通り、鈍い痛みはスルリと消えていった。
ストッキングの穴は消えないが、傷跡は、ほぼ分からないくらい、綺麗に治っている。
自分の肌の変化に唖然とする真理亜に、顔を上げた男は微笑んで頷いてから、向かいの立方体のソファに腰かけた。
「少しは、落ち着けましたか?」
眼鏡の中の瞳が穏やかに細められる。
真理亜は僅かに目元を朱に染めながら頷く。
「良かった」
彼がスーツの内側から手袋を取り出しながら、口を開いた。
天使の名前はコーラル。
訳あって逃げ出した咎人・ザレムを追いかけて、真理亜の部屋に訪れた。
彼は、昨晩、ザレムが真理亜に接触したと推測している。
それは、真理亜のベランダに、ザレムの痕跡が残った空き缶が置かれていたことと、真理亜自身が今日体験した不可解な状況が証明しているらしい。
時折言葉を濁しながらも、コーラルは、突然の訪問と、誘拐まがいの一連の行動を真理亜に詫びた。
「こちらの不手際で、貴方を巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした」
丁寧に頭を下げた後、男は顔をあげると、眼鏡のブリッジを中指で押し上げた。