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一夜の愛、人との愛
第6章 黒い地下牢
冷えた空気の糸を切ったのは、罪人の笑い声だった。
「っはははは。仕方ねーよ、クレイル。そいつは、半人前なんだし? なぁ?」
ザレムの声を無視し、コーラルを見据えたままのクレイルと対照的に、コーラルは空中を睨むと拳を握りしめた。
俯き口端から垂れ落ちる血を眺めながらも、ザレムは言葉を止めない。金色の瞳を細めて地面を強く睨み、歯ぎしりしそうな表情で口を開く。
「そいつだって、あの時、ボーディの間にいれば、俺と同じことをしたさ」
「するわけ無いだろ!」
「コーラル」
ザレムの言い草に反射的に怒鳴り返した弟に、銀髪の天使が静かに声をかける。
「戻れ」
「・・・・・・」
兄の冷静な指示に、コーラルは、数秒抗うように動けずにいたが、やがて黙って頷いた。
立ち去りかける足音に、ザレムが顔を上げ金色の目を細める。
「そんなに半人前扱いがイヤなら、お前が、あの女に確かめてみろよ。どうせ出来っこね、・・・っ!」
言葉は途中から、天使の槍に潰されたが、それでもザレムは挑発的な笑みを浮かべたまま、金髪の天使を見送っていた。
* * *
地下牢から自室に戻ったコーラルが見たのは、自室の寝台で眠る、真理亜の姿だった。
てっきりソファに座っていると思っていたせいか、驚いて一瞬足が止まりかける。
と、彼女の影から白い動物が顔を出すと、音もなく床に降りて天使の足元へ近寄った。
「ありがとう、ルシオ。彼女を守っていてくれて」
細く長い指先で美しい毛並みを撫でてやると、ルシオと呼ばれた白い動物は心地よさそうに目を細め、開いたままのガラスの扉からテラスへと出て行った。
空は柔らかいオレンジ色に染まっている。
コーラルはテラスへのガラス扉を閉めると、天蓋で守られた毛布の中に眠る人間の傍へ歩み寄った。
「っはははは。仕方ねーよ、クレイル。そいつは、半人前なんだし? なぁ?」
ザレムの声を無視し、コーラルを見据えたままのクレイルと対照的に、コーラルは空中を睨むと拳を握りしめた。
俯き口端から垂れ落ちる血を眺めながらも、ザレムは言葉を止めない。金色の瞳を細めて地面を強く睨み、歯ぎしりしそうな表情で口を開く。
「そいつだって、あの時、ボーディの間にいれば、俺と同じことをしたさ」
「するわけ無いだろ!」
「コーラル」
ザレムの言い草に反射的に怒鳴り返した弟に、銀髪の天使が静かに声をかける。
「戻れ」
「・・・・・・」
兄の冷静な指示に、コーラルは、数秒抗うように動けずにいたが、やがて黙って頷いた。
立ち去りかける足音に、ザレムが顔を上げ金色の目を細める。
「そんなに半人前扱いがイヤなら、お前が、あの女に確かめてみろよ。どうせ出来っこね、・・・っ!」
言葉は途中から、天使の槍に潰されたが、それでもザレムは挑発的な笑みを浮かべたまま、金髪の天使を見送っていた。
* * *
地下牢から自室に戻ったコーラルが見たのは、自室の寝台で眠る、真理亜の姿だった。
てっきりソファに座っていると思っていたせいか、驚いて一瞬足が止まりかける。
と、彼女の影から白い動物が顔を出すと、音もなく床に降りて天使の足元へ近寄った。
「ありがとう、ルシオ。彼女を守っていてくれて」
細く長い指先で美しい毛並みを撫でてやると、ルシオと呼ばれた白い動物は心地よさそうに目を細め、開いたままのガラスの扉からテラスへと出て行った。
空は柔らかいオレンジ色に染まっている。
コーラルはテラスへのガラス扉を閉めると、天蓋で守られた毛布の中に眠る人間の傍へ歩み寄った。