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一夜の愛、人との愛
第6章 黒い地下牢
真理亜は夢を見ていた。



チェイスに、ザレムが地下牢に幽閉されていることを聞き、その地下牢というのは、この建物の地下にあることを知って、だが、頑なに「行ってはいけない」と言い聞かされた。
それでも妙に地下が気になる彼女の頬に、少年はキスをして笑った。
「ザレムが人間の女と出会って、何もしないはずが無い。だから、自分はコレ以上のことは出来ない」と。
止めることもできない、会いに行けとも言えない、けれど、「行くな」と言うのが正しい天使の行いだから、と、そう告げた少年が、妙にそわそわしながら飛び去っていくのを見て、真理亜は溜息をつくしかできなかった。
部屋の主がいないうちに、こっそり抜けだそうかとドアに近づくと、あの白い動物が扉の目の前で眠っていた。
流石に、気持ちよさそうに眠っている小動物を前に、無理やり抜け出すこともできないと思って、仕方なく、彼女は天蓋付きの寝台に座ったのだ。

座ると、どっと疲れが押し寄せてきた。
今日の朝が上手く思い出せない。
時間の感覚が抜け落ちたように、どうも足元が覚束ない気分だ。

(・・・)

穴の開いたストッキングを脱いで、真理亜は寝台に横になった。

(ちょっとだけ)

きっと、コーラルも、もうすぐ戻ってくる。
それまでの仮眠のつもりだった。





  *  *  *





『真理亜が夢を見ている』

その事実は、コーラルには刺激が強すぎた。

自分の寝台の上で眠る、彼女の左手はシャツの合わせを開き、はだけたキャミソールの中に潜り込んで、右手はスカートの中で足の付根に指を這わせている。

真理亜を起こそうとした彼は、思わず動けなくなり、彼女の様子を凝視した。

柔らかいシーツに横たわる彼女は、目を閉じたまま切なげに眉をよせ、薄く開いた赤い唇から寝息をもらしている。

時折、鼻にかかった声をもらし、体を蛇のようにくねらせる姿は、男を誘っているようだ。

僅かに横を向いた顔に、顎まであるセミロングの柔らかい髪がかかり、白く形の良い鎖骨が間から覗く。





―――半人前なんだし、なぁ?


―――お前が確かめてみろよ





彼女を見つめていたコーラルは、喉を鳴らして唾を飲み込むと、白い手袋に指をかけた。





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