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一夜の愛、人との愛
第7章 魂の色
「俺は、まだ純粋な天使になりきってねーからな」


ザレムが自分の翼に視線を向けて呟いた。

伸びをするように、ぐっと翼を広げてから、再び戻すと、真理亜に顔を向ける。


「人間から生まれた天使は、羽が生え変わるまでは、人間と天使のハーフだ。ガキと呼ばれたり、半人前と呼ばれたり、子供扱いされて、エデンの行動範囲も狭い」


ザレムの瞳が天井をチラリと見上げる。


「どの天使も、最初は人間の血を引いて生まれる。だから、本能的に、人間という存在に惹かれやすい。特に、羽が生え変わっていない俺やコーラル、他にも数人いるガキは、欲望を抑えるのが難しい。お前が近くに来れば、さっさと、その肌を味わいたくなる」


金色の瞳に首筋をなぞられ、真理亜が小さく顎を引いた。

思わず、右手で項を抑えながら、真理亜が唇を開いた。


「羽が、生え変わったら?」


「・・・」


つかの間、射すくめられるような沈黙の後に、ザレムが視線を逸らした。


「羽が生え変わったら、完全な天使になる。ある程度、人間に対する欲求をコントロール出来るようになるし、人間を抱いて子供を孕ませることも出来るようになる」


「孕ませる・・・」


男の言葉を繰り返し、真理亜が背中を丸め、お腹をかばうように両手を回した。


家畜のような単語に、背中がサッと冷えた。


「半人前の天使が、人を抱いたら、どうなるの?」


静かに顔を上げた真理亜に、ザレムが遠くの松明を見つめた。


「女の魂に、傷がつく」


真理亜の視線を受けながら、ザレムは顔色一つ変えずに淡々と答えた。



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