この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
一夜の愛、人との愛
第8章 銀の鎖
その時、クレイルが地上へ続く階段へ顔を向けた。

自分と同じ顔立ちの金髪の天使に気づくと、片手を上げて「留まれ」と指示を出す。





「マリアさん。行きましょう」

クレイルの声に、真理亜が髪を揺らして振り返る。

一瞬、周りに広がった彼女の香りに、ザレムが何か言いかけた。

だが、天使の様子に気づかないまま、彼女は立ち上がる。

松明を持つ天使の方へ歩き出すも、真理亜が足を止めた。



振り返った彼女と、拘束された天使の視線がぶつかる。



先に視線を逸らしたのは男だった。



俯いた黒い翼の持ち主を複雑な瞳の色で見つめてから、彼女は踵を返した。





クレイルの傍へ歩みより、通路まで戻る。

待機していた天使に松明を預け、銀髪の天使は、壁に指先で何か描き出した。

「牢の壁を厚くします。これで、こちらの音は”穢れ”には聞こえなくなる」

真理亜に顔を向けずに作業をしながら、クレイルは告げた。

哀しげに視線を下げた真理亜は、ふと、視界に揺れた金色の何かに、顔を階段へ向けた。

「っ」

彼女が息を飲む音に、クレイルが片眉を上げながらも作業を終えた指を下ろす。

階段の見張りと牢の見張りに指示を出し終えると、銀髪の天使は、階段の最後の数段を降りきれずにいる弟に気付き、改めて真理亜へ視線を向けた。

(・・・)

俯いたまま居心地悪そうにしている真理亜と、眼鏡の奥の瞳を細め、拳を強く握っている弟に、何かを察した兄が苦笑する。

「ここでお待ちください」

そっと囁いて、クレイルがコーラルの傍へ歩み寄った。






「マリアさん」

真理亜は、気まずさに顔を上げられずに待っていたが、声を潜めた会話の途中、自分の名前を呼ばれて、おずおずと声の主を見た。

コーラルが、階段の途中で立ち止まったまま真理亜を見つめている。

「申し訳ありませんでした」

上手く言葉を返せない真理亜に一つ頭を下げると、

コーラルは晴れない表情のまま、先に階段を上がって姿を消した。





その様子を見送って、クレイルが再び真理亜の横へ歩み寄る。

「歩けますか?」

尋ねる声音は、驚くほど穏やかで優しい。

「はい」

俯いたまま、小さな声で返事をした真理亜に微笑むと、クレイルが松明を見張りに渡した。





「行きましょう」





/226ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ