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一夜の愛、人との愛
第8章 銀の鎖

空が色を失い、エデンが闇に包まれる中、白い建物だけが淡く光る。
風が止まり、音が消え、命あるものが皆静寂を纏う中で、その建物だけが柔らかく色づいている。
天使達が「建物」と呼ぶ、その白亜の建造物は、人の言葉で綴れば、「宮殿」とも「神殿」とも「白い館」とも呼べる。
その館の一室で、真理亜は静けさに抗うように火照った吐息を零していた。
「正確に言えば、この建物は、常に、人間の女に影響します」
規律にこだわる男は、己の言葉を正しながら、服の襟元に手をかけた。
白地に青と金の飾りが入った堅苦しい服の、喉元の金具を外して、その指をすぐ下の金ボタンへ滑らせる。
波打つシーツの上、頬を微かに赤らめつつ、真理亜が潤んだ瞳で男を見上げた。
男の顔には、情欲の気配は微塵も感じられない。
「あまり、長居は良くないと思いますが、・・・何故か浄化の許可が降りない」
感情の抜けた言葉を並べながら、男は自分の上着の前を緩めた。
窮屈な上着を脱いで、ソファに投げると、デスクの傍へ足を向ける。
光沢のある革張りの椅子を片手で軽々引き寄せ、寝台を斜めに見据える場所に配置する。
そのまま座れば、彼女の足首から腰を十分に視認できる位置だ。
「とはいえ。こんな話は、空に色が戻ってからが良いでしょうね」
徐々に熱を増す真理亜の呼吸に目を細めつつ、寝台に近寄り、クレイルは神経質そうな指を彼女の太腿に伸ばした。
風が止まり、音が消え、命あるものが皆静寂を纏う中で、その建物だけが柔らかく色づいている。
天使達が「建物」と呼ぶ、その白亜の建造物は、人の言葉で綴れば、「宮殿」とも「神殿」とも「白い館」とも呼べる。
その館の一室で、真理亜は静けさに抗うように火照った吐息を零していた。
「正確に言えば、この建物は、常に、人間の女に影響します」
規律にこだわる男は、己の言葉を正しながら、服の襟元に手をかけた。
白地に青と金の飾りが入った堅苦しい服の、喉元の金具を外して、その指をすぐ下の金ボタンへ滑らせる。
波打つシーツの上、頬を微かに赤らめつつ、真理亜が潤んだ瞳で男を見上げた。
男の顔には、情欲の気配は微塵も感じられない。
「あまり、長居は良くないと思いますが、・・・何故か浄化の許可が降りない」
感情の抜けた言葉を並べながら、男は自分の上着の前を緩めた。
窮屈な上着を脱いで、ソファに投げると、デスクの傍へ足を向ける。
光沢のある革張りの椅子を片手で軽々引き寄せ、寝台を斜めに見据える場所に配置する。
そのまま座れば、彼女の足首から腰を十分に視認できる位置だ。
「とはいえ。こんな話は、空に色が戻ってからが良いでしょうね」
徐々に熱を増す真理亜の呼吸に目を細めつつ、寝台に近寄り、クレイルは神経質そうな指を彼女の太腿に伸ばした。

