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一夜の愛、人との愛
第9章 罪の尺度
(・・・・・・)
カップの中身に気をつけながら寝台の端に移動する。
猫足の小さな机の上にカップを置くと、真理亜はシーツの上に正座をした。
その動きで、気付く。
「・・・やっぱり」
下着を身につけていない。
胸元に触れてみると、肌触りの良いシャツは、何にも隔てられることなく真理亜の胸元に掌の温もりを伝えた。
周りを見渡しても、下着どころか自分のシャツやスカートも見当たらない。
不安に駆られて、身を乗り出すように室内を見渡し、真理亜は更なる違和感に気づいた。
(背中・・・?)
外気に触れる感覚に、片手を背後に回して、小さく目を見開く。
真っ白いリネンのような着心地の七分丈シャツの、その背中は、綺麗に2本の縦筋が入っていた。
(これって)
まさに"羽"を伸ばすための切り込みだ。
背中を探った指先が、そのまま背骨横の素肌に触れて、真理亜は仄かに目元を赤らめた。
服を着ているとはいえ、背中は、半ば丸出しになりうる。
しかも、胸のサイズに合わせた服は、やや肩幅が大きい分、背中から両脇へ空間がダボついた空間があり、落ち着かない。
天使が着るには都合が良いのだろうが、人間の、それも女性の真理亜にとっては、フィット感はいまいちだ。
両手で脇の下の布を摘んで少し後ろへ引っ張る。
少しは背中の筋が気にならなくなるが、これはこれで、胸元のラインがくっきりと浮かび上がって扇情的だ。
小さく溜息をついて、はたと思い至った。
あの涼し気な空気を纏う天使が、自分に、これを着せたのだ。
昨日、一糸纏わず、翻弄されて、途中から感覚も曖昧になった自分に。
「・・・・・・」
はっとして薄手の毛布を捲ってみると、真っ白なシーツが敷かれていて、昨夜の甘い欲の名残は欠片も感じられない。