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一夜の愛、人との愛
第9章 罪の尺度
扉を開けると、白い塊が飛び出してきて真理亜の腕の中に収まった。
「こんにちは、ルシオ」
初めて名前を呼ばれて、その生き物は嬉しそうに「ミー」と啼くと、真理亜の胸に顔を擦り付ける。温かく優しい刺激に微笑みながら、真理亜は前を行く天使に続き、その部屋に足を踏み入れた。
部屋の主が目を見開いている。
気まずさはあったが、先程クレイルと交わした会話が真理亜を支えた。
小さく頭を下げた真理亜に、コーラルも頭を垂れた。
「コーラル、暫く彼女を守っていてくれるか」
「兄さん?」
銀フレームの眼鏡を取り出し、耳にかけながら、弟は何処か咎めるような表情で兄を見る。昨日、失態を晒したという自意識が、思わず兄への反論に変わりかける。
予想していたのか、クレイルが自信を滲ませる笑みを浮かべた。
「長い時間じゃない。"穢れ"を地下から連れてくる」
「え、でも」
「"浄化"の許可が下りない。神格長様に直談判しようと思う。…ランの部屋の使用も禁じられているからな。これ以上、彼女がエデンに留まるのも良くない。空が黒くなる前に、彼女を返すことが、今の私達の最優先事項だろう」
コーラルが眉を寄せて真理亜を見る。
真理亜は、振り返ったクレイルに真剣な眼差しで一つ小さく頷いていた。
エデンに来た時と同じ服装の彼女は、首に濃紺の布を巻いている。
弟が呼び止めるより、兄が歩き始める方が早かった。
はっとしたコーラルが1歩、その姿を追いかけようとしたところで、兄は扉を開けて振り返る。
「マリアさんと、少し話をするといい」
「・・・・・・」
静かに微笑んだ銀髪の天使は、追いすがりかけた彼の言葉を鮮やかに摘み取ってから、扉の向こうへ消えた。
「こんにちは、ルシオ」
初めて名前を呼ばれて、その生き物は嬉しそうに「ミー」と啼くと、真理亜の胸に顔を擦り付ける。温かく優しい刺激に微笑みながら、真理亜は前を行く天使に続き、その部屋に足を踏み入れた。
部屋の主が目を見開いている。
気まずさはあったが、先程クレイルと交わした会話が真理亜を支えた。
小さく頭を下げた真理亜に、コーラルも頭を垂れた。
「コーラル、暫く彼女を守っていてくれるか」
「兄さん?」
銀フレームの眼鏡を取り出し、耳にかけながら、弟は何処か咎めるような表情で兄を見る。昨日、失態を晒したという自意識が、思わず兄への反論に変わりかける。
予想していたのか、クレイルが自信を滲ませる笑みを浮かべた。
「長い時間じゃない。"穢れ"を地下から連れてくる」
「え、でも」
「"浄化"の許可が下りない。神格長様に直談判しようと思う。…ランの部屋の使用も禁じられているからな。これ以上、彼女がエデンに留まるのも良くない。空が黒くなる前に、彼女を返すことが、今の私達の最優先事項だろう」
コーラルが眉を寄せて真理亜を見る。
真理亜は、振り返ったクレイルに真剣な眼差しで一つ小さく頷いていた。
エデンに来た時と同じ服装の彼女は、首に濃紺の布を巻いている。
弟が呼び止めるより、兄が歩き始める方が早かった。
はっとしたコーラルが1歩、その姿を追いかけようとしたところで、兄は扉を開けて振り返る。
「マリアさんと、少し話をするといい」
「・・・・・・」
静かに微笑んだ銀髪の天使は、追いすがりかけた彼の言葉を鮮やかに摘み取ってから、扉の向こうへ消えた。