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一夜の愛、人との愛
第9章 罪の尺度
銀髪の天使が立ち去ると、2人は一瞬視線を合わせて、それとなく逸らした。
分かっていても、真理亜には羞恥心が、天使には罪悪感が、絡まっている。
「ミー」
そんな2人の間の空気を、ルシオが突付く。
先に空気を溶かしたのは真理亜だった。
「座っても、いいですか?」
その問いに、はっとして金髪の天使が止まっていた時間を動かす。
「もちろんです」
強張ってはいるが、頬に笑みを浮かべて、天使は部屋の奥のソファへと彼女を導く。
自分も翼を畳み、向い合って腰を下ろすと、「何か飲みますか」と尋ねた。
膝の上のルシオを撫でながら、真理亜は首を振る。その様子からは、寝台の上であられもない姿で、むずがって潤んでいた名残は微塵も感じられない。
不思議な芸術作品を見つけ、目が離せないような心持ちで、天使は彼女を見つめた。
気付いたらしい真理亜が、顔を上げた。
「?」
「あ・・・、すみません」
「・・・いいえ」
また、目を逸らす。
だが、天使は、もう時を止めようとは思わなかった。
「マリアさん。質問が、あります」
「・・・」
ルシオの毛並みに指を差し入れていた真理亜が、瞬いた。
何が彼女を変えたのか、誰が彼女を変えたのか。
その変化のきっかけを知りたくなり、半人前の天使は、唇を開く。