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一夜の愛、人との愛
第9章 罪の尺度

地下でザレムに聞いた話を、真理亜は隠すことなくコーラルに伝えた。
天使の世界には"人間に語るべきではない事情"もあると思ったが、それも含めて、静かに共有する。これから人間の世界に戻るだろう彼女は、思い残さないように、若い天使に自分の体験を伝えようと思っていた。
だから、話し終えた時に、再び湧いた謎を、もう胸にとどめておくことも出来なかった。
「あの・・・、私も、聞いていいですか?」
「はい」
会話を交わす時間の中で、コーラルの肩からも大分力が抜けている。
柔らかい微笑みで、真理亜の言葉を促した。
「あの人は…、"ザレム"は、消滅するの?」
2人の間の空気が、また一瞬、細く張り詰める。
「私…、抱かれた記憶も、無いし…」
真理亜の言葉に、コーラルが難しい顔で視線を落とす。
腕を組み目を閉じると、重たい溜息を一つ吐き出した。
「記憶は、問題ではありません。ザレムは、きっと、貴方を抱いています」
「・・・」
「抱かれた人間の魂の傷は、私達の目には"揺らぎ"として見えます。私は半人前ですが、それでも、魂の違いは少しは見える」
「でも、だからって…」
孕むなんて、簡単なことじゃない。
そう続けようとして、真理亜は、ふと言葉を止めた。
再び目を開けた金髪の天使から目を逸らし、記憶を探るように目を細める。
あの銀髪の美麗な天使は、何て言っていた。
―――人間の女を建物に呼び、一夜を共に過ごす。
―――発情させる。
一夜を共にして、孕ませる。
「はらませる・・・」
無意識に唇から零れ出た言葉に、ルシオの耳がピクリと動いた。
「天使は…、意図的に、孕ませることが、出来るんですか?」
急に思い至った仮定に、真理亜は愕然としながら金髪の天使へ視線を向けた。

