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だ〜いすき!
第3章 花火大会の夜は切なくて
陽輔に礼を言い、ソファーから立ち上がろうとした華子だったが、躯を少し伸ばすような形で陽輔に引き寄せられて、その胸に閉じこめられてしまい、少し焦る。
その躯を陽輔に委ねるような形は、躯がそのまま陽輔の方にもたれかかっているということで。
自分の体重が全て相手に掛かってしまうこの体制は、陽輔に悪い気がして。焦って姿勢を正そうとする華子だった。
「…あっ!」
その腕の中。
身じろいでいる自分の背中に回された陽輔の腕に力がこもるのを感じるのと同時に、その距離が更に近付いて。
陽輔にぎゅっと抱きすくめられ、新しい浴衣の布の匂いと一緒に陽輔の匂いが華子の鼻腔を一気に満たし、その体温を近くに感じて。胸の鼓動がトクンと跳ねた。
ドキドキと早まっていく心臓の音がやけに大きく響くような気がして…静かに息を吐き出した華子の耳に聞こえた陽輔の声。
「……華子はそんな可愛い姿で。電話しても繋がら無いし―――俺は…」
「心配しすぎだよ、ようちゃん。」
「でも、俺は見たんだ。」
「見たって、なにを?」
実際、陽輔が修司らしき人物の姿を見たのは人混みの中の一瞬だけだった。もし華子が見ていないのなら、わざわざ口に出す必要なんか無いのかもしれない。
でも。連絡の取れなかった空白の時間がこんなにも俺の心を不安にするんだ。
―――――修司と会ったのか?華子