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秘密
第5章 仮面の下
気取った中年夫婦、愉しげな主婦達、皆が秘密を隠しながら笑顔を作っているように見える。


秘密…

私、あの時



なぜあの出来事を誰にも言わず封印したのか。

辱しめを受けた事を恥じたからだけではなかった。

2人の教師を残して体育倉庫から逃げ出してから、沙織の躰は疼いてしょうがなかった。

1人泣きわめきながらも、男からの凌辱に乱された躰は濡れ続けた。
沙織は自慰を覚えた。



あの言葉、息づかい、そして、躰中を這い回った荒々しい手の感覚…

忘れられなかった。


もっと知りたい
もっと…



沙織はそんな自分が許せずに記憶ごと葬りたかった。


仮面を被った

自分自身に…

剥がす事ができないように


ひっそりと蠢いていたものを、倉本が目覚めさせた。

仮面は剥がされ、また新たな仮面を被る。
色の違う幾つもの仮面を使い分け、笑顔を作る。


「いらっしゃいませ、お客様、何名様ですか?」


ざわめく店内に倉本を捜す。


逢いたい

逢いたい

逢いたい


来ては困ると思いながら、沙織は倉本を待ち続けた。



──「ご注文は?」


「沙織さんを1人…」



いつものように囁いて、困らせて欲しい

熱い瞳で…





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