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秘密
第5章 仮面の下
健(タケル)さん…


沙織は倉本を想った。


きっと来てくれる

何をおいても必ず…


夫は来ない

やるべき事をきちんと済ませ、それからやって来る


勝手に決めつけていた。

今まで築いてきたものなんて、そんなものだったように思える。

倉本が現れる前から薄々感じていた、倉本が現れてからははっきり見えてきた。

いつも変わらない夫の優しい笑顔は、妻に何かを隠す為の仮面…

沙織はそれがいつからだったのか、わからないままだった。


女の影を隠し続けている夫は、いったい何を守っているのだろう





自分

平和な家庭

世間体……




「お店オープンしまーす」


杏奈が店の外に『営業中』のプレートを掛ける。


「いらっしゃいませ」


数名の客が案内されて入ってきた。


「いらっしゃいませ」


沙織と純子が笑顔で声を合わせる。


純子も秘密を持ち、素知らぬ顔で過ごしている。 それは沙織も同じだった。


店長もオーナーも、母達もみんな同じ…


仮面の下にある素顔が暴かれたら…


予約席に客を案内しながら店内を眺め、沙織はそこにあるそれぞれの仮面に目をやった。



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