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秘密
第5章 仮面の下
「店長がいない時に限って忙しかったわね」


一段落ついた頃、純子がほっとしたように小声で言った。

沙織は笑顔を返しながら、レジで会計を待つ客の方へ向かった。


「お待たせしました」

「領収書も頼むね」

「はい、かしこまりました」


現金を受け取り、釣りを返す。

レジから吐き出されてきた領収書をちぎり、社印を押した。


「この社名を書いてくれるかな」


男性客が名刺を出した。

「はい」


名刺に印字された会社名を書き入れながら、沙織は中央に書かれた見慣れた苗字に目がいった。



──西村……秀夫



「…っ…」


聞き覚えのある名前だった。

沙織は名刺と領収書を相手に手渡しながら、顔を上げた。

スラリと背が高く、白髪混じりで落ち着いた雰囲気…


「お待たせしました」

「ん、ありがとう」


ふと笑った目元…
財布に釣りをしまう横顔…


「あ、あの…」


ダメ元で声を掛けた。


「ん?」

「あの、違ってたら申し訳ありません…」

「何かな?」

「西村…慎一郎さんを、ご存知ないですか?」


知らん顔で通り過ぎるわけにはいかない、



「……君は、誰かな」




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