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秘密
第5章 仮面の下
沙織は一礼して店の入口に向かった。

振り返ると西村が名残惜しげに見送っていた。

それは本当に見守られているようで、なぜか沙織の心は温かくなり、これまで抱いていた不信感がなくなっていくようだった。


誠実な人でも、家を離れた寂しさから過ちを起こしてしまう事があるのだろう

その代償がいかに大きいかは、失った時に初めて知るのかもしれない

夫にとって私は、大きな代償なのだろうか

私にとって夫は…



「ねぇ、今の素敵なオジサマは誰?」


二人が興味津々な顔をする。


「夫の父親よ」

「わ~素敵な人ですね」

「なんだか訳アリね」


純子の目が光る。


「たぶんもう会わないと思います。」

「ますます訳アリだわ」

「純子さん程ではないですよー、あはは」


杏奈が明るく笑った。


「なによ、人が落ち込んでる時に…」

「元に戻るだけじゃないですか、今ならまだ間に合いますよ」


杏奈の言葉に純子が神妙な顔をした。


「……その通りね…」


沙織と杏奈は驚いて顔を見合わせ、上手くいったねと頷いた。





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