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秘密
第5章 仮面の下
「あら、そんなに見つめられたら穴があいちゃうわ、ふふ、…百合子ったら大袈裟な事を言ったのね。
なんともないのよ、お店でちょっとふらふらしたもんだから、帰ってきて少し横になってただけなの」


「この人ったら午後はお店開けたのよ」

「だめじゃないですか」

「予約の方もいたし、少し横になったら治っちゃったから、ふふっ」


リビングのテーブルには出前の寿司が並んでいた。

夫の姿が見当たらない。


「あれ? お義母さん、慎一郎さんは…」

「急に仕事の打ち合わせが入ったらしくて」

「そんな、だって…」

「ほらね、息子はあてにならないんだってば」


百合子が口を挟んだ。


「あ、沙織さんはどう思う?」


百合子はソファに腰掛けお茶を一口飲んだ。


「なんでしょう」

「姉さんの再婚話」

「えっ?」


突っ立ったままの沙織はキッチンで急須にお湯を注いでいる咲子を見つめた。

義父の姿が浮かぶ。


「今更そんな…ねぇ…」


困った顔で咲子がクスリと笑った。


「今更じゃないわよ、これからなのよ、わかってないんだからもう…」

「百合子、もういいわよ」


咲子はそう言うと、お盆に急須と湯飲みを乗せてリビングに入ってきた。




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